別冊ノーサイド|仲間が作る農産物を届ける安心感 安井浩和|WASEDABOOK


















なぜアンテナショップですか?


物心が着き始めた頃には、もう自営のスーパーの手伝いをしていて、20歳を超えた頃には、学費を稼ぐ意味もあり、店長を任されました。

大手のカップラーメンを関東一の売り上げを記録してしまし面白いと思いましたね。

ただ、当時は、加盟店に属していて、商品や特売メニュー、配置などすべて本部の指定で決められていて、不自由でした。

商品も7000ほどもあり、消費者の立場からしても、そんなの食べ尽せない。

流通の面でも、値段設定も、立地も、もっと自由でありたいと、思いましたね。そこで、独立系のストアを作ろうと決めました。

でも、従来のストアだけだと何か物足らないわけです。
そこで、消費者と生産者の情報を相互に直接結びつけることができないか、と考えました。

そうすれば、単なる販売だけではなく、おいしいものを提供する喜びがもっと得られるはずだし、地域の食生活の担い手になれるのではないかと。



茂木産農産物にこだわる理由。


いろいろと全国を視察して回りましたが、縁は近くにあるもので、早稲田大学の構内を使った早稲田商店会のイベント「エコサマーフェスティバルin早稲田(現在、地域感謝祭)」が開催されていた折に、茂木町が出品されていて、店への出荷に手を挙げてくださいました。

茂木との出会いは、とてもショッキングなものでした。
ぼくは、生粋の早稲田生まれの早稲田育ちで、地方の生活とか本当の自然を皮膚感覚で体験したことがなかったように思います。

初めて、茂木へ訪れたときのことです。

案内されて、エンジンを切り、車から降りて、「棚田」というものと向き合ったときは、何というか、自然のなかの’無音’というものに、切迫した恐怖感がありました。

自然が怖いというか、畏怖の観念が襲ってきたのです。

この’自然の恐怖心’みたいなものを店に運べないかななんて思いましたね。


DSCN0230.JPG毎日、安全・安心・美味しいものを届けます。



こだわり商店では、何が「売り」ですか。


仲間がつくった農産物という意識です。

「棚田米」や「メダカのがっこう」がうまいとか、松井ファームの松井さんご夫妻がつくる有機無農薬野菜は最高だとか、「大兼製麺」は名品だとか、取り扱いの商品について、いろいろとアピールできるし、それこそいいものです。

でも、結局は、作っている人たち、運んでいる人たちは、ぼくが信頼している人たちで、その信頼する仲間たちが手を組んで出来上がった商品を売っているぼくがいるわけで、それに尽きると思います。

信頼する仲間たちの農産物だからこそ、自信をもって安心してお客様に届けることができる、ということだと思います。




DSCN0223.JPG農産物を作った自慢の仲間を紹介する写真。




宮城県南三陸町や東京都檜原村からも出荷されています。


現在、アイテムは、500品程度に増えてきました。

志津川漁港で鮮魚店を営む山内恭輔さんは、無添加の水産物にこだわっています。

私と同世代なのですが、元カメラマンで、商品の撮影にはとてもうるさいです(笑)。

また、奥多摩の檜原村で、たなごころという酵母パン屋さんを営む井上佳洋さんは、地域コーディネータとして、地域おこしのコンサルタントでも活躍しています。


アンテナショップの反響は、いかがですか。


地元の早稲田のお客様は、じつに優しい人たちが多いですね。
アンテナショップは、その優しさに、じかに触れることができます。

結局、アンテナショップは、生活者情報の交流といった側面があって、コミュニティの活性化とか、地域おこしとかと同じ効果がでてきます。

アトム通貨の実施や「レジ袋使い回し大作戦」のエコ対策とか、空き店舗を埋めるとか、自分のアンテナをどうぞ使ってほしいと願っていますね。


画像 032.jpg今では、家族ぐるみで茂木町に遊ぶ。裸の付き合いだ。那珂川の鮎漁法『やな』。


確実にネットワークが広がっていますが、アンテナショップ経営の厳しさもありますね。


消費者が、安心できて、安全で、おいしいものを食べたいという希望にどう応えていくか、これはとても厳しいものがあります。

一過性のブームで終わってしまう場合もあります。
また、採算ベースを考えると、毎日、流通コストとの戦いですね。

消費者と生産者の情報開示がアンテナショップの生命線なのですが、そうなると、いかに商品力というか、ブランド力を付けるかが勝負だと思います。

商品力を持たない限り、とくに消費者は、情報開示に協力してくれません。

現在、山地の仲間入りを募集して、入会していただくテナントを増やすという努力をしていますが、それもアンテナショップ自体に、ブランド力がないと難しいと考えています。




アンテナショップの存在価値とは


媒体化です。
人、モノ、情報をつなぐ、ということだと思います。

媒体として、食生活を具現化する、というのが使命だと考えています。



店長としての夢を教えてください。


いろんな楽しいイベントが盛り込まれた「朝市」を毎週、やりたいですね。

小学校3年の頃だったのですが、この辺では、縁日なんかが開かれていたんですね。人の交流が盛んで、とても楽しかったですね。


DSCN0221.JPG豊富な商品が手に取りやすいように優しく並んでいる。






安井浩和 やすいひろかず
1978年(昭和53年)生まれ。明治大学商学部卒。
「こだわり商店」早稲田本店店長、(株)稲毛屋代表取締役
幼少時代から自営のチェーンストア店を手伝い、20歳で学生店長に。
2007年10月、農商工連携と空き店舗対策をテーマにしたアンテナショップを新宿区西早稲田にオープンさせる。